医療薬学Ⅰ
問121非臨床試験に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 各種の新規医薬品候補物質の中から、目的とするもの又は特定の薬理活性をもつものを選別することを、特定スクリーニングテストという。○
b 毒性試験は、一般毒性試験と特殊毒性試験に大別されるが、後者の試験では薬物動態、癌原性、依存性などが検索される。×
解:毒性試験は、一般毒性試験と特殊毒性試験に大別されるが、後者の試験では癌原性、依存性などが検索される。
c 酵素や受容体に対する作用など、数多くの項目を試験して、その物質の開発の可能性を幅広く見出すことを、ランダムスクリーニングテストという。○d 薬効薬理試験は、臨床的に期待される薬理学的特性(主作用)と作用機序の解明を目的とする試験で、健常動物や各種病態モデル動物が用いられる。○
e 一般薬理試験は、主作用以外の薬理作用を明らかにするための試験であり、主に病態モデル動物が用いられる。×
解:一般薬理試験は、主作用以外の薬理作用を明らかにするための試験であり、必ずしも病態モデル動物が用いられる必要はない。
問122
薬物と受容体及び細胞内情報伝達系の対応のうち、正しいものの組合せはどれか。
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a | イソプレナリン | ―― | アドレナリンβ1受容体 | ―― | Gsタンパク質を介するアデニル酸シクラーゼの活性化○ |
b | ベタネコール | ―― | ムスカリンM3受容体 | ―― | ホスホリパーゼCの活性化○ |
c | フルマゼニル | ―― | GABAA受容体 | ―― | Cl-透過性亢進× |
解 | フルマゼニル | ―― | GABAA受容体 | ―― | Cl-透過性阻害 |
d | カルペリチド | ―― | セロトニン5-HT2受容体 | ―― | Giタンパク質を介するアデニル酸シクラーゼの阻害× |
解 |
カルペリチド (ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)) |
―― | GC-A受容体 | ―― | cGMPを活性化 |
e | アカルボース | ―― | インスリン受容体 | ―― | チロシンキナーゼの活性化× |
size="2">解:アカルボース-消化管における糖の吸収を遅らせる。 インスリン受容体-チロシンキナーゼ活性化○ |
問123
下図は、薬物Aのモルモット摘出回腸収縮作用の濃度―反応曲線と、それに対する薬物B及び薬物Cの拮抗関係を示している。なお、薬物B及び薬物Cは、薬物Aの適用10分前に処置した。薬物の正しい組合せはどれか。ただし、薬物B及び薬物Cの濃度は至適濃度とする。
3 アセチルコリン パパベリン スコポラミン
PDE阻害→cAMP↑
問124
コリン作動薬及び抗コリン薬に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 塩酸ピロカルピン(第3級コリン薬(M))は、シュレム管からの眼房水の排出を促進し、緑内障を改善する。○
b メチル硫酸ネオスチグミン(可逆性ChoE阻害薬)は、手術後の腸管麻痺や膀胱麻痺に用いられる。○
c 臭化プロパンテリン(第4級抗コリン薬)は、前立腺肥大にもとづく排尿障害に有効である。×
解:臭化プロパンテリンは、前立腺肥大にもとづく排尿障害を悪化させる。
d 臭化ブチルスコポラミン(第4級抗コリン薬)は、パーキンソン病に用いられる。×解:臭化ブチルスコポラミンは、パーキンソン病に用いられない(第4級のため中枢性なし)。
e 臭化水素酸ホマトロピン(抗コリン薬)は、瞳孔散大筋の収縮を抑制することにより瞳孔を縮小させる。×解:臭化水素酸ホマトロピンは、瞳孔括約筋の収縮を抑制することにより瞳孔を拡大(散瞳)させる。
問125
交感神経系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 塩酸チラミンは、神経終末からのノルアドレナリン遊離を促進して、血圧上昇を起こす。○
b 塩酸フェニレフリンは、アドレナリンα1受容体を刺激することにより、散瞳を起こす。○
c 塩酸コカインは、局所麻酔作用によりノルアドレナリンの神経終末への取り込みを抑制する。×
解:塩酸コカインは、アミンポンプ阻害作用によりノルアドレナリンの神経終末への取り込みを抑制する。
d 塩酸メタンフェタミンは、神経節のニコチン受容体に作用して、血圧上昇を起こす。×解:塩酸メタンフェタミンは、神経終末に作用して、NE、DA遊離促進、MAO阻害により交感神経興奮作用、中枢興奮作用を起こす。
問126
ニコチンに関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 用量の多少にかかわらず自律神経節後線維を脱分極させ、一過性の興奮に引き続いて持続的な伝達の遮断をもたらす。×
解:用量が多いと自律神経節後線維を脱分極させ、一過性の興奮に引き続いて持続的な伝達の遮断をもたらす。
b ガム剤や貼付剤として禁煙の補助に使用されるが、他の用途で医療に用いられることはない。○c 主な作用部位は自律神経節と神経筋接合部であり、中枢作用はない。×
解:主な作用部位は自律神経節と神経筋接合部であり、中枢作用もある。
d 受容体はイオンチャネル内蔵型であり、Na+やCa2+を透過させる。○問127
下図は、無処置の摘出カエル骨格筋線維を支配する運動神経を電気刺激することによって得られる終板の膜電位変化と筋線維の張力変化を、模式的に示したものである。
器官槽内に薬物a、b、cを加えて同様の実験を行ったところ、A、B、Cのような結果が得られた。ただし、Cでは運動神経の電気刺激は行っていない。薬物a、b、cの正しい組合せはどれか。
a b c
2 ダントロレンナトリウム 臭化ベクロニウム 塩化スキサメトニウム
問128
催眠薬及び鎮静薬に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a アルプラゾラムは、大脳辺縁系におけるセロトニン作動性神経系を刺激することにより、鎮静作用や抗不安作用を発現する。×
解:タンドスピロンは、大脳辺縁系におけるセロトニン作動性神経系を刺激することにより、鎮静作用や抗不安作用を発現する。
アルプラゾラム:GABAARのBDZ結合部位に結合→→Cl-流入促進
b ブロムワレリル尿素には薬物依存性があり、連用の中止により痙れん発作、せん妄、振戦などが現れることがある。○アルプラゾラム:GABAARのBDZ結合部位に結合→→Cl-流入促進
c エスタゾラムは、GABAA受容体複合体のベンゾジアゼピン結合部位に作用し、大脳辺縁系及び視床下部における情動機構を抑制する。○
d トリアゾラムは、作用持続の短いベンゾジアゼピン系薬で、一過性前向性健忘を起こすことがある。○
e ペントバルビタールナトリウムは、大脳皮質及び脳幹網様体の抑制作用が強く、レム睡眠を増加させる。×
解:ペントバルビタールナトリウムは、大脳皮質及び脳幹網様体の抑制作用が強く、レム睡眠を著明に抑制する。
問129
中枢神経系作用薬に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 塩酸クロルプロマジンは、主に大脳皮質及び辺縁系や間脳のドパミンD2受容体遮断を介して、抗精神病作用を現す。○
b バルプロ酸ナトリウムは、興奮性伝達物質であるグルタミン酸の合成抑制を介して、抗てんかん作用を現す。×
解:バルプロ酸ナトリウムは、中枢抑制性伝達物質であるGABAの分解に関与するGABAトランスアミナーゼを阻害して、抗てんかん作用を現す。
c フェニトインは、脳神経細胞へのNa+流入促進を介して、抗てんかん作用を現す。×解:フェニトインは、脳神経細胞へのNa+流入抑制を介して、抗てんかん作用を現す。
d 炭酸リチウムは、脳内ドパミンの産生亢進を介して、抗そう(躁)作用を現す。×解:炭酸リチウムは、脳内カテコールアミン活性を低下させることで作用を現すと考えられている。
e 塩酸ミアンセリンは、脳内アドレナリンα2受容体の遮断を介して、抗うつ作用を現す。○問130
中枢に作用する薬物と薬理作用及び適応の対応のうち、正しいものの組合せはどれか。
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a | 塩酸ドネペジル | ―― | アセチルコリンエステラーゼ阻害 | ―― | アルツハイマー型痴呆症○ |
b | ドロキシドパ | ―― | ドパミンD2受容体刺激 | ―― | ハンチントン舞踏病× |
解: | ドロキシドパ | ―― | ノルエピネフリンに変換 | ―― | すくみ症(パーキンソン末期) |
c | 塩酸チザニジン | ―― | 多シナプス反射抑制 | ―― | 癌性麻痺○ |
d | 塩酸パロキセチン水和物 | ―― | セロトニン再取り込み阻害 | ―― | 精神分裂病(統合失調症)× |
解: | 塩酸パロキセチン水和物 | ―― | セロトニン再取り込み阻害 | ―― | うつ病、パニック障害 |
e | エダラボン | ―― | フリーラジカル消去 | ―― | 脳梗塞による機能障害○ |
問131
鎮痛薬に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 塩酸モルヒネによる呼吸抑制は、μ受容体に親和性を有する塩酸ナロキソンによって拮抗される。○
b 塩酸ブプレノルフィンの耐性と依存性は、塩酸モルヒネより弱い。○
c クエン酸フェンタニルは、神経遮断性鎮痛の目的でドロペリドールと併用される。○
d ペンダゾシンは、κ受容体に高い親和性を有し、麻酔前投与や鎮痛の目的で投与される。○
問132
メチルジゴキシンに関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a H+,K+-ATPase阻害作用により、心筋細胞内のNa+濃度上昇を介してCa2+濃度を上昇させる。×
解:Na+,K+-ATPase阻害作用により、心筋細胞内のNa+濃度上昇を介してCa2+濃度を上昇させる。
b 房室ブロックの治療に使用される。×解:房室ブロックになる可能性がある。
c 低カリウム血症により作用は減弱する。×解:低カリウム血症により作用は増強する。
d 虚血性心疾患に基づくうっ血性心不全の治療に使用される。○e 心房細動・粗動による頻脈の治療に使用される。○
問133
酒石酸メトプロロールに関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 選択的アドレナリンβ2受容体遮断薬である。×
解:選択的アドレナリンβ1受容体遮断薬である。
b 気管支ぜん息の患者には禁忌である。×解:気管支ぜん息の患者には慎重投与である。
c 腎傍糸球体細胞からのレニン分泌を抑制する。○d 本態性高血圧症の治療に用いられる。○
e 頻脈性不整脈の治療に用いられる。○
問134
低血圧の治療に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 塩酸エチレフリンは、代表的な血管収縮薬として動物実験に用いられるが、臨床使用されることはない。×
解:塩酸エチレフリンは、代表的な血管収縮薬として動物実験に用いられ、また臨床使用される。
b うっ血性心不全が原因の心原性ショックに対する最も一般的な対処法は、塩酸ドパミン又は塩酸ドブタミンの点滴静注である。○c 塩酸ミドドリンは、経口投与可能なドパミンD1受容体刺激薬であり、本態性低血圧に用いられる。×
解:塩酸ミドドリンは、経口投与可能なα1受容体刺激薬であり、本態性低血圧に用いられる。
d メチル硫酸アメジニウムは、ノルアドレナリンの交感神経終末への再取り込みとモノアミン酸化酵素による不活性化を阻害することで、昇圧をもたらす。○問135
プラバスタチンナトリウムの薬理作用に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 肝細胞内コレステロール含量を低下させる。○
b 肝細胞膜のLDL受容体数を減少させる。×
解:肝細胞膜のLDL受容体数を増大させる。
c 血清LDL値を低下させる。○d 血清HDL値を上昇させる。○
e 血清総コレステロール値は変化させない。×
解:血清総コレステロール値は低下させる。
問136
フロセミドに関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 主な作用点はヘンレ係蹄の太い下行脚である。×
解:主な作用点はヘンレ係蹄の太い上行脚である。
b 利尿効果はトリクロルメチアジドよりも強い。○c Na+-K+-2Cl-共輸送系を促進する。×
解:Na+-K+-2Cl-共輸送系を阻害する。
d 血漿レニン活性を上昇させることがある。○e 高尿酸血症を引き起こすことがある。○
問137
呼吸器系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 塩酸ドキサプラムは、末梢性化学受容器のムスカリン受容体に作用し、呼吸興奮を起こす。×
解:塩酸ドキサプラムは、主に頚動脈体の科学受容器を直接刺激により、呼吸興奮を起こす。
b テオフィリンはホスホジエステラーゼを阻害して、気道平滑筋細胞内サイクリックAMP
(cAMP)濃度を高める。○c 硫酸サルブタモールは、アドレナリンβ2受容体に対するよりβ1受容体に対する選択性が高い。×
解:硫酸サルブタモールは、アドレナリンβ1受容体に対するよりβ2受容体に対する選択性が高い。
d セラトロダストは、トロンボキサンA2受容体を遮断することにより、抗ぜん息作用を示す。○e プロピオン酸フルチカゾンは、吸入で使用される抗ぜん息薬である。○
問138
ウルソデオキシコール酸に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 胆のう胆汁中のコレステロールの相対比率を低下させ、コレステロールの飽和化を抑制する。○
b 外殼が石灰化したコレステロール系胆石の溶解にも著効を示す。×
解:外殼が石灰化したコレステロール系胆石の溶解には無効である。
c 胆石溶解には利胆に用いるより高用量を必要とする。○d 胆管内胆石による激しい痛みのある患者では、作用は速効性である。×
解:胆管内胆石による激しい痛みのある患者では、作用は速効性ではない。(速効性:抗コリン薬、オピオイド系鎮痛薬)
e クロフィブラートとの併用により、胆石溶解作用が減弱することがある。○問139
消化性潰瘍治療薬に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a Helicobacter pylori の除菌には、ランソプラゾール、クラリスロマイシン、アモキシシリンの3者を併用するのが一般的である。○
b オメプラゾールは、Na+,K+ -ATPaseのSH基と結合し、酵素活性を阻害する。×
解:オメプラゾールは、H+,K+
-ATPaseのSH基と結合し、酵素活性を阻害する。
c 非ステロイド性抗炎症薬の長期服用を中止することができない消化性潰瘍患者では、ミソプロストールを併用することがある。○d トロンビンは、強酸性下でも強い効力を発現するので、胃の出血に内服で使用される。×
解:トロンビンは、強酸性下では強い効力を発現しないので、胃の出血に内服で使用することができない(至適pH:7)。
e レバミピドは、ヒスタミンH2受容体遮断薬であり、攻撃因子を強力に抑制する。×解:レバミピドは、粘膜における活性酸素消去薬であり、防御因子を強力に抑制する。
(+PG増加作用)
(+PG増加作用)
問140
消化器系に作用する薬物と薬理作用及び適応の対応のうち、正しいものの組合せはどれか。
薬物 | 薬理作用 | 適応 | |||
a | ドンペリドン | ―― | ドパミンD2受容体遮断 | ―― | 機械的イレウス× |
解: | ドンペリドン | ―― | ドパミンD2受容体遮断 | ―― | 消化器症状改善 |
b | 塩酸ロペラミド | ―― | アセチルコリン遊離抑制 | ―― | 下痢症○ |
c | 塩酸グラニセトロン | ―― | セロトニン5 -HT3受容体遮断 | ―― | 悪心・嘔吐○ |
d | ジメンヒドリナート | ―― | ヒスタミンH2受容体遮断 | ―― | 便秘症× |
解: | ジメンヒドリナート | ―― | ヒスタミンH1受容体遮断 | ―― | 眩暈、嘔吐 |
e | クエン酸モサプリド | ―― | オピオイドμ受容体遮断 | ―― | 急性膵炎× |
解: | クエン酸モサプリド | ―― | 選択性セロトニン5-HT4受容体刺激薬 | ―― | 慢性胃炎による消化器症状改善 |
問141
子宮に作用する薬物に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a オキシトシンは、陣痛誘発や分娩促進の目的で用いられる。○
b ジノプロスト(プロスタグランジンF2α)は、持続的に子宮筋の緊張を高めるので、陣痛誘発には使えない。×
解:ジノプロスト(プロスタグランジンF2α)は、律動的に子宮筋の緊張を高めるので、陣痛誘発に使える。
c マレイン酸エルゴメトリンは、速効的な子宮収縮作用を有し、弛緩性子宮出血に対して用いられる。○d 塩酸ピペリドレートは、ムスカリン受容体刺激作用を有し、切迫流・早産の防止に用いられる。×
解:塩酸ピペリドレートは、ムスカリン受容体阻害作用を有し、切迫流・早産の防止に用いられる。
e 塩酸リトドリンの子宮平滑筋弛緩作用は、アドレナリンβ2受容体の刺激による。○問142
貧血治療薬に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 鉄欠乏性貧血において、鉄製剤の投与により赤血球数が正常に回復した場合は、直ちに投与を中止する。×
解:鉄欠乏性貧血において、鉄製剤の投与により赤血球数が正常に回復した場合でも長期投与が必要である。
b 腎性貧血に用いられるエリスロポエチンは、腎において産生される造血因子である。○c 悪性貧血は内因子不足に基づく貧血であり、ビタミンB12製剤の経口投与が最も一般的な治療法である。×
解:悪性貧血は内因子不足に基づく貧血であり、ビタミンB12製剤の筋注投与が最も一般的な治療法である。
d 自己免疫性の溶血性貧血の治療には、プレドニゾロンなどの糖質コルチコイド製剤が用いられる。○問143
血液凝固に影響を与える薬物に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a アルテプラーゼは、プラスミノゲンをプラスミンに変換し、血栓を溶解する。○
b ヘパリンナトリウムは、アンチトロンビンIIIに特異的に拮抗することにより、血液凝固阻止作用を示す。×
解:ヘパリンナトリウムは、アンチトロンビンIIIに特異的に結合することにより、血液凝固阻止作用を示す。
c イコサペント酸エチルは、トロンボキサンA2受容体を特異的に遮断することにより、血小板凝集を抑制する。×解:イコサペント酸エチルは、トロンボキサンA2産生抑制することにより、血小板凝集を抑制する。
d 塩酸サルポグレラートは、セロトニン5-HT2受容体を遮断することにより、血小板凝集を抑制する。○e トラネキサム酸は、プラスミンによるフィブリン分解を阻害することにより、線溶系を抑制する。○
問144
緑内障治療薬に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a イソプロピルウノプロストンの点眼剤は、気管支ぜん息や心疾患を併発している患者に対しても使用できる。○
b マレイン酸チモロールの点眼は、瞳孔径や焦点調節に影響を与えない。○
c カルバコールを点眼すると、まぶしさを訴えることがある。×
解:カルバコールを点眼すると、暗さを訴えることがある。
d ラタノプロストは、アドレナリンβ2受容体遮断作用によって眼圧を低下させる。×解:ラタノプロストは、(ぶどう膜強膜流出経路から)眼房水流出促進作用によって眼圧を低下させる。
e アセタゾラミドを内服するときは、L-アスパラギン酸カリウムを併用してはいけない。×解:アセタゾラミドを内服するときは、L-アスパラギン酸カリウムを併用することが望ましい。
問145
ホルモン関連薬物に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a クエン酸クロミフェンは、内因性エストロゲンの作用を増強することにより、排卵を抑制する。×
解:クエン酸クロミフェンは、抗エストロゲン作用により、排卵を誘発する。(負のフィードバック)
b 酢酸デスモプレシンは、腎集合管における水の再吸収を促進する。○c レボチロキシンナトリウムは、組織の酸素消費を高め基礎代謝を上昇させる。○
d 酢酸ブセレリンは、反復投与により下垂体のゴナドトロピン放出ホルモン受容体数を増加させ、卵巣からの性ホルモンの分泌を促進する。×
解:酢酸ブセレリンは、反復投与により下垂体のゴナドトロピン放出ホルモン受容体数を減少させ、卵巣からの性ホルモンの分泌を抑制する。
e ナテグリニドは、α-グルコシダーゼを阻害することにより、食後高血糖を改善する。×解:ナテグリニドは、膵臓のランゲルハンス島B(β)細胞を刺激することにより、食後高血糖を改善する。
問146
慢性関節リウマチ治療薬に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a ジクロフェナクナトリウムは、シクロオキシゲナーゼ阻害により抗リウマチ効果を発現するが、効果発現には3ヵ月以上の投与が必要である。×
解:ジクロフェナクナトリウムは、シクロオキシゲナーゼ阻害により抗リウマチ効果を発現するが、効果発現は速効性である。
b プレドニゾロンを連用後、急に使用を中止すると関節痛やショックが現れることがある。○c ブシラミンは、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)であり、関節破壊の進行を抑制する。○
d メトトレキサートは、白血病治療の場合に比して、より少量で使用される。○
e ヒアルロン酸ナトリウムは、関節内のヒアルロン酸を増加させる目的で、静脈内注射で用いられる。×
解:ヒアルロン酸ナトリウムは、関節内のヒアルロン酸を増加させる目的で、関節腔内注射
で用いられる。
問147
抗結核薬と薬効の作用機序及び副作用の関係のうち、正しいものの組合せはどれか。
薬物 | 薬効の作用機序 | 副作用 | |||
a | イソニアジド | ―― | N-アセチル転移酵素を阻害 | ―― | 肝障害× |
解: | イソニアジド | ―― | アミノ酸代謝を阻害 | ―― | 肝障害 |
b | リファンピシン | ―― | DNA依存性RNAポリメラーゼを阻害 | ―― | 肝障害○ |
c | 塩酸エタンブトール | ―― | 細胞壁合成又は核酸合成経路を抑制 | ―― | 味覚障害× |
解: | 塩酸エタンブトール | ―― | 細胞壁合成又は核酸合成経路を抑制 | ―― | 視力障害 |
d | ピラジナミド | ―― | パラアミノ安息香酸に拮抗 | ―― | 第8脳神経障害× |
解: | ピラジナミド | ―― | アミノ酸代謝を阻害 | ―― | 肝障害 |
e | 硫酸ストレプトマイシン | ―― | 30Sリボソームに結合してタンパク質合成を阻害 | ―― | 腎障害○ |
問148
抗真菌薬・抗原虫薬と作用機序及び適応の組合せのうち、正しいものはどれか。
薬物 | 作用機序 | 適応 | |||
1 | メトロニダゾール | ―― | DNAの二重鎖切断 | ―― | 真菌症× |
解: | メトロニダゾール | ―― | DNAの二重鎖切断 | ―― | トリコモナス症(原虫) |
2 | フルシトシン | ―― | 核酸合成阻害 | ―― | アメーバ赤痢 |
解: | フルシトシン | ―― | 核酸合成阻害 | ―― | 真菌症 |
3 | スルファドキシン・ピリメタミン | ―― | 葉酸代謝阻害 | ―― | トリコモナス症 |
解: | スルファドキシン・ピリメタミン | ―― | 葉酸代謝阻害 | ―― | マラリア |
4 | アムホテリシンB | ―― | エルゴステロール合成阻害 | ―― | マラリア |
解: | アムホテリシンB | ―― | エルゴステロールと結合し膜機能障害 | ―― | 真菌症 |
5 | ミコナゾール | ―― | ラノステロールのC-14脱メチル化酵素の阻害 | ―― | 真菌症 |
問149
抗悪性腫瘍薬の作用機序に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a シクロホスファミドは、チュブリンの重合を阻害する。×
解:シクロホスファミドは、アルキル化によるDNA合成を阻害する。
b エトポシドは、DNAをアルキル化し、DNAに損傷を引き起こす。×解:エトポシドは、トポイソメラーゼⅡ阻害作用によるDNA合成を阻害する。
c メルカプトプリンは、体内でイノシン酸のチオ誘導体(TIMP)に変換され、DNA及びRNAの生合成を阻止する。○d シタラビンは、体内でシタラビン三リン酸ヌクレオチド(Ara-CTP)になり、DNA合成を阻害する。○
問150
次の薬物とその有害作用に対する処置薬の対応のうち、正しいものの組合せはどれか。
薬物 | 処置薬 | ||
a | シスプラチン | ―― | チオ硫酸ナトリウム× |
解: | シスプラチン | ―― | グラニセトロン |
解: | シアン | ―― | チオ硫酸ナトリウム |
b | メトトレキサート | ―― | ホリナートカルシウム○ |
c | 有機リン系農薬 | ―― | ヨウ化プラリドキシム○ |
d | アスピリン | ―― | N-アセチルシステイン× |
解: | アスピリン | ―― |
ミソプロストール ファモチジン |
解: | アセトアミノフェン | ―― | N-アセチルシステイン |
問151
次の薬物相互作用の中で、薬力学的(pharmacodynamic)相互作用と考えられるものはどれか。
1 アルミニウム含有制酸剤によるエノキサシンの作用減弱×薬物動態学的
2 チアWド系利尿薬によるジゴキシンの作用増強○
3 リファンピシンによるトリアゾラムの作用減弱×薬物動態学的
4 イトラコナゾールによるシクロスポリンの作用増強×薬物動態学的
5 コレスチラミンによるワルファリンの作用減弱×薬物動態学的
問152
薬物の生体膜透過機構に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 能動輸送は、Fickの法則に従って進行する。×
解:能動輸送は、Michaelis-Mentenの式に従って進行する。(Fickの法則:受動拡散)
b 同じトランスポーターによって輸送される薬物が複数存在しても、互いの輸送に影響を及ぼしあうことはない。×解:同じトランスポーターによって輸送される薬物が複数存在した場合、輸送の競合阻害が起こる。
c Michaelis-Menten式に従う輸送において、薬物濃度がMichaelis定数に比べて著しく低い領域では、輸送速度は薬物濃度にほぼ比例する。○d ジペプチド、トリペプチドを基質として認識するペプチドトランスポーターによるβ-ラクタム系抗菌薬の輸送は、二次性能動輸送の例である。○
問153
薬物代謝に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a セファレキシンは臨床的に用いられる投与量の範囲で、代謝が飽和する。×
解:セファレキシンは臨床的に用いられる投与量の範囲で、代謝されず、ほとんど未変化体のまま尿中排泄される腎消失型薬物である。
b イソニアジドの代謝(アセチル化)には、薬物代謝酵素の遺伝的多型と関係した人種差があり、多くの日本人のアセチル化能は高い。○c アンチピリンは大部分が肝シトクロムP450によって代謝されるため、健常人に比べ肝硬変の患者では血中消失半減期が延長する。○
d ジゴキシンは主として代謝により体内から消失するので、肝機能の低下した患者に投与する場合には、投与量を減らすなどの注意が必要である。×
解:ジゴキシンは主として代謝されず腎から消失するので、肝機能の低下した患者に投与する場合には、投与量を減らすなどの
注意が必要ではないが、腎機能が低下した患者には注意が必要である。
問154
薬物フ血漿タンパク結合に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a Arrheniusプロットは、結合定数やタンパク質1分子当りの薬物結合部位数を求める際に用いられるプロットの一つである。×
解:Arrheniusプロットは、反応速度定数の温度変化による変化を調べるためのプロットである。
解:Scatchardプロット、両逆数プロットは、結合定数やタンパク質1分子当りの薬物結合部位数を求める際に用いられるプロットである。
b 薬物Aのタンパク結合が薬物Bによって競合的に阻害される場合、薬物Aの結合定数は薬物Bが存在しない場合に比べて小さくなるが、タンパク質1分子当りの結合部位数は変化しない。○解:Scatchardプロット、両逆数プロットは、結合定数やタンパク質1分子当りの薬物結合部位数を求める際に用いられるプロットである。
c α1-酸性糖タンパク質は、主に酸性薬物と強く結合する。×
解:α1-酸性糖タンパク質は、主に塩基性薬物と強く結合する。
d 薬物の血漿タンパク結合の測定に用いられる平衡透析法は、血漿タンパク質に結合していない非結合形薬物のみが半透膜を透過できることを利用した測定方法である。○ 問155
薬物吸収に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 酢酸デスモプレシンはペプチド性薬物であるが、鼻粘膜から吸収されるため、点鼻剤として中枢性尿崩症の治療に用いられている。○
b 肺からの薬物吸収機構は一般に能動輸送であるため、吸収は速やかである。×
解:肺からの薬物吸収機構は一般に受動輸送であるが、一部の薬物は能動輸送である。
c 薬物を口腔粘膜から吸収させることにより、肝初回通過効果を回避できる。○d 直腸粘膜からの薬物の吸収はpH分配仮説に従うので、酸性薬物はpKaが小さいほど吸収されやすい。×
解:直腸粘膜からの薬物の吸収はpH分配仮説に従うので、酸性薬物はpKaが大きいほど吸収されやすい。
問156
腎クリアランスに関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは糸球体ろ過速度(GFR)を表し、この値が小さいほど腎機能が低下していることを示す。×
解:パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは腎血漿流量を表し、この値が小さいほど腎機能が低下していることを示す。
b イヌリンの血漿中濃度が増加すれば、腎クリアランスは増大する。×解:イヌリンの血漿中濃度に影響を受けず、糸球体ろ過速度(GFR)に相当するイヌリンの腎クリアランスは一定である。
c サリチル酸の尿細管からの再吸収は尿が酸性になると抑制されるので、腎クリアランスは大きくなる。×解:サリチル酸の尿細管からの再吸収は尿が酸性になると促進されるので、腎クリアランスは低下する。
d ゲンタマイシンは主として糸球体ろ過により尿中に排泄され、その腎クリアランスはGFRにほぼ等しい。○問157
薬物の胆汁中排泄に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 薬物の肝クリアランスは、肝臓での代謝クリアランスと代謝物の胆汁中への排泄クリアランスの和で表される。×
解:薬物の肝クリアランスは、肝臓での代謝クリアランスのみで表される。
b 胆管側腹上には、ATPの加水分解エネルギーを直接利用した一次性能動輸送体群が発現し、薬物の胆汁中排泄に関与している。○c インドメタシンはエステル型グルクロン酸抱合体として胆汁中へ分泌され、腸管から再吸収されることなく糞便中へ排泄される。×
解:インドメタシンはエステル型グルクロン酸抱合体として胆汁中へ分泌され、小腸で腸内細菌のβ-グルコシダーゼの作用により、未変化体に戻るため、腸管より再吸収される。
d 分子量が小さい薬物ほど胆汁中に排泄されやすい。×解:
分子量500以上の大きな薬物ほど胆汁中に排泄されやすい。
問158
うっ血性心不全の患者に1-コンパートメントモデルに従う薬物を静脈内定速注入したとき、定常状態での血漿中薬物濃度は4 mg/Lであった。その後症状が変化したので、今回同一の用法用量で投与したところ、定常状態において、次のデータを得た。今回の体内動態に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
前回 今回
全身クリアランス 1 (L/min) 1 (L/min)
分布容積 130 (L) 53 (L)
a 定常状態の血漿中薬物濃度は、分布容積が小さくなったので高くなる。×
解:定常状態の血漿中薬物濃度は、全身クリアランス、静脈内定速静注入速度が前回と変化がないため、前回と変わらない。
b 定常状態の血漿中薬物濃度は、分布容積が小さくなっても前回と変わらない。○c 消失半減期は前回と変わらない。×
解:消失半減期は前回と比べ短い。
d 血漿中薬物濃度が定常状態の97%に達するまでの時間は遅くなる。×
解:血漿中薬物濃度が定常状態の97%に達するまでの時間は早くなる。
e 血漿中薬物濃度が定常状態の97%に達するまでの時間は早くなる。問159
薬物50mgを健常人に静脈内投与したとき、その血中濃度時間曲線下面積(AUC)は200μg・min/mLであり、未変化体の尿中排泄率は投与量の20%、残りはすべて肝臓で代謝される。この薬物50 mgを経口投与した後に、消化管粘膜透過率を100%としたとき、得られるAUC (μg・min/mL)に最も近い値は次のどれか。ただし、肝血流速度は1.5 L/minとする。また、この薬物の経口投与後の吸収速度は、血中消失速度に比較して十分に速く、肝臓への分布は瞬時の平衡が成立すると仮定する。
4 170
問160
医薬品の剤形と投与法に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 薬物を注射剤として筋肉内へ投与すると、低分子薬物は投与部位から毛細血管壁を経て血中へ移行するが、分子量約5,000以上の高分子薬物は主にリンパ管へ移行する。○
b ニトログリセリン錠を舌下へ投与すると、速やかな吸収と薬効発現を期待できる。○
c 薬物を坐剤として直腸内投与すると、吸収後著しく初回通過効果を受けるため、全身作用は期待できない。×
解:薬物を坐剤として直腸内投与すると、吸収後初回通過効果を受けないため、全身作用は期待できる。
d 薬物をエアゾール剤として肺へ投与すると、エアゾールの粒子径の違いにより肺内到達部位が異なる。○問161
次の図は、ヒトに塩酸アミトリプチリンの50mg経口投与後及び25mg筋肉内投与後の血漿中のアミトリプチリン濃度及びその活性代謝物ノルトリプチリン濃度の時間推移を示している。次の記述のうち正しいものはどれか。
1 塩酸アミトリプチリンの経口投与後の量的バイオアベイラビリティは、筋肉内投与後の量的バイオアベイラビリティとほぼ等しい。×
解:塩酸アミトリプチリンの経口投与後の量的バイオアベイラビリティは、筋肉内投与後の量的バイオアベイラビリティより小さい。
2 塩酸アミトリプチリンの経口投与では、肝または消化管における初回通過効果の関与が考えられる。○3 塩酸アミトリプチリンを経口投与したときも筋肉内投与したときも、アミトリプチリン血漿中濃度と薬理効果の関係は同じである。×
解:塩酸アミトリプチリンを経口投与したときも筋肉内投与したときも、アミトリプチリン血漿中濃度と薬理効果の関係は同じではない。
4 ノルトリプチリンの全身クリアランスは、塩酸アミトリプチリンの投与部位の影響を受けて変化している。×解:ノルトリプチリンの全身クリアランスは、塩酸アミトリプチリンの投与部位の影響を受けない。
5 血漿中のノルトリプチリン濃度から考えると、塩酸アミトリプチリンの経口投与後の量的バイオアベイラビリティは筋肉内投与後の量的バイオアベイラビリティより大きい。×解:血漿中のノルトリプチリン濃度から考えると、塩酸アミトリプチリンの経口投与後の量的バイオアベイラビリティは筋肉内投与後の量的バイオアベイラビリティより小さい。
問162
高齢者における薬物療法に関連する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 腎血流量が減少するので、腎排泄型薬物では副作用の発現に注意すべきである。○
b 血漿中アルブミン濃度は加齢とともに低下するので、血漿タンパク質との結合率の高い薬物を適用する時には注意を要する。○
c 細胞外液量が減少しているので、相対的に薬物血中濃度が低くなる。×
解:細胞外液量が減少しているので、相対的に薬物血中濃度は影響を受ける。
d 総水分量が減少しているので、利尿薬を使い過ぎると脱水症状を起こしやすい。○e 胃液分泌量の増加が起こるので、経口投与される薬物の作用発現に留意すべきである。×
解:胃液分泌量の減少が起こるが、胃内pHは吸収に及ぼす影響は小さい。
問163
疾病時の薬物動態に関する記述について、正しいものの組合せはどれか。
a テオフィリンの消失半減期は、慢性肝障害患者において著しく短くなる。×
解:テオフィリンの消失半減期は、慢性肝障害患者において著しく長くなる。
b リドカインの肝クリアランスは、うっ血性心不全時の肝血流量減少により低下する。○c バンコマイシンは、腎機能が低下したとき体内に蓄積しやすい。○
d プロプラノロールの体内動態は、肝疾患時の肝血流量減少の影響を受けない。×
解:プロプラノロールの体内動態は、肝疾患時の肝血流量減少の影響を受ける。
問164
抗てんかん薬フェニトインを250 mg/day服用中の患者の定常状態平均血中濃度(以下、血中濃度)は、15μg/mLであった。定常状態におけるフェニトインの体内からの消失速度はMichaelis-Menten式で表され、この患者の最大消失速度(Vmax)は400 mg/dayであった。今、肝機能低下が起こり、患者のVmaxが340 mg/dayに減少したとすると、250 mg/dayで服用を続けた場合、予想される血中濃度(μg/mL)の値はどれか。なお、フェニトインのバイオアベイラビリティは100%とする。
1 15 2 20 3 25 4 30 5 35
問165
血中薬物濃度モニタリング(TDM)を必要とする薬物に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a ジゴキシンは、投与開始翌日から血中濃度を測定する。×
解:ジゴキシンは、トラフ値または内服で6~8時間後、静注で4時間後以降に行う。
b タクロリムスは、全血を用いて血中濃度を測定する。○(他にはシクロスポリン)c リチウムの血中濃度は、肝血流量の低下によって増大する。×
解:リチウムの血中濃度は、肝血流量の低下による影響は受けにくい。
d テオフィリンの血中濃度は、喫煙によって影響を受ける。○1 (a、b) 2 (a、d) 3 (b、c) 4 (b、d) 5 (c、d)
問166
薬物Aの分解はAの2次反応である。いま、薬物Aの初濃度C0を種々変化させて半減期t1/2を実験的に求め、その対数値をlogC0に対してプロットしたとき、正しい図は1~5のどれか。
問167
医薬品粉体の性質に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 同一の粉体について、沈降法による重量基準の重量平均径は、顕微鏡法による個数基準の長さ平均径よりも大きい。○
b 粉体表面への液体のぬれを考えるとき、拡張ぬれの接触角は付着ぬれの接触角よりも大きい。×
解:粉体表面への液体のぬれを考えるとき、拡張ぬれの接触角は付着ぬれの接触角よりも小さい。
c エルダー(Elder)の仮説が成立する場合、2種類以上の水溶性粉体の混合物の臨界相対湿度(CRH)は、個々の粉体のCRHよりも大きくなる。×解:エルダー(Elder)の仮説が成立する場合、2種類以上の水溶性粉体の混合物の臨界相対湿度(CRH)は、個々の粉体のCRHよりも小さくなる。
d 安息角は、流動性が悪い粉体ほど大きい。○問168
固体薬物Aは拡散律速によって溶解し、溶解速度は以下に示すNoyes Whitneyの式に従うことがわかっている。
dC/dt = kS(Cs - C)
C: 薬物濃度
k: 見かけの溶解速度定数
S: 有効面積
Cs : 薬物の溶解度
1 0.0004 2 0.002 3 0.02 4 0.4 5 2
問169
流体I、II、IIIの流動特性を測定し、下図の流動曲線を得た。その結果に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 流体Iの流動曲線 (1) は、測定温度を高くすると傾きが大きくなる。○
b 流動曲線 (2) を示す流体IIは、降伏値(f)より小さいせん断応力においては見かけ上、ニュートン流体として挙動する。×
解:流動曲線 (2)
を示す流体IIは、降伏値(f)より大きいせん断応力においては見かけ上、ニュートン流体として挙動する。
c 流動曲線 (3)
を示す流体IIIの見かけの粘度は、せん断応力の増加に伴って大きくなる。○問170
次の図は、ある界面活性剤の希薄溶液の表面張力と浸透圧を測定し、溶液濃度の関数としてプロットしたものである。記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a (1) は浸透圧、(2) は表面張力のプロットである。×
解:(1)
は表面張力、(2)
は浸透圧のプロットである。
b これらのプロットがほぼ同じ濃度で折れ曲がりを生じるのは、界面活性剤が重合するためである。×解:これらのプロットがほぼ同じ濃度で折れ曲がりを生じるのは、界面活性剤が会合するためである。
c 図中の折れ曲がりを示す濃度を臨界ミセル濃度(cmc)という。○d ミセルの形成は、陰イオン性、陽イオン性、両性の界面活性剤で起こり、非イオン性の界面活性剤では起こらない。×解:ミセルの形成は、陰イオン性、陽イオン性、両性の界面活性剤で起こり、また非イオン性の界面活性剤でも起こる。
e ミセルの形成は、水溶液中で起こり、非極性溶媒中では起こらない。×解:ミセルの形成は、水溶液中、非極性溶媒中で起こる。
問171
医薬品(A欄)とその消化管吸収改善を目的としたプロドラッグ(B欄)の対応として正しいものの組合せはどれか。
A欄 | B欄 | |
a | アンピシリン | バカンピシリン○ |
b | フルオロウラシル | ドキシフルリジン× |
解: | フルオロウラシル | ドキシフルリジン(腫瘍組織への選択性を高めたもの) |
c | テストステロン | プロピオン酸テストステロン× |
解: | テストステロン | プロピオン酸テストステロン(難溶化のよる作用持続化) |
d | 塩酸チアミン | 塩酸フルスルチアミン○ |
問172
日本薬局方製剤総則に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 液剤は、液状の内用製剤又は外用製剤で、製剤総則中の他の製剤各条に該当しないものをいう。○
b トロ一チ剤は、通例、医薬品を一定の形状に製したもので、口中で徐々に溶解又は崩壊させて、口腔、咽頭などに適用する製剤で、崩壊試験法が適用される。×
解:トロ一チ剤は、通例、医薬品を一定の形状に製したもので、口中で徐々に溶解又は崩壊させて、口腔、咽頭などに適用する製剤で、含量均一性試験又は質量偏差試験法のみが適用される。
c 眼軟膏剤は、結膜嚢に適用する無菌に製した軟膏剤であり、本剤に含まれる医薬品粒子の大きさは、通例、150μm以下である。×解:眼軟膏剤は、結膜嚢に適用する無菌に製した軟膏剤であり、本剤に含まれる医薬品粒子の大きさは、通例、75μm以下である。
d 坐剤は、通例、医薬品を基剤により一定の形状に成型したもので、肛門又は膣に適用する固形の外用剤である。○e エリキシル剤は、通例、揮発性医薬品をエタノール又はエタノールと水の混液で溶かした液状の製剤である。×
解:酒清剤は、通例、揮発性医薬品をエタノール又はエタノールと水の混液で溶かした液状の製剤である。
解:エリキシル剤は、通例、甘味及び芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の内用剤である。
問173
製剤機器に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a ロータリー型錠剤機は、ターンテーブルが1回転するごとに、充てん、圧縮、抜圧、排出の操作を外周部の別々の個所で行うため、エキセントリック型錠剤機よりも製錠速度が遅い。×
解:ロータリー型錠剤機は、ターンテーブルが1回転するごとに、充てん、圧縮、抜圧、排出の操作を外周部の別々の個所で行うため、エキセントリック型錠剤機よりも製錠速度が速い。
b V型混合機では、混合時間を長くするほど粉体の良い混合状態が得られる。×解:V型混合機では、混合時間を長くするほど粉体の悪い混合状態が得られる。
c 転動造粒装置は、転動している粉体に結合剤溶液を噴霧するもので、球形に近い粒子が得られる。○d ジェットミルは、気体の流体エネルギーによって粉砕を行うもので、主として粒子間の高速衝突によって粉砕が促進される。○
問174
無菌製剤の添加剤に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 注射剤の緩衝剤、等張化剤としてホウ酸は用いない。○
b 輸液など多量に注射する注射剤には保存剤を加えない。○
c 用時溶解して用いる注射剤においては賦形剤を加えることはできない。×
解:用時溶解して用いる注射剤においては賦形剤を加えることはできる。
d 点眼剤の粘性を増大させる目的で、水溶性高分子を添加することはできない。×解:点眼剤の粘性を増大させる目的で、水溶性高分子を添加することはできる。
e 点眼剤の保存剤としてパラオキシ安息香酸エステル類は用いない。×解:点眼剤の保存剤としてパラオキシ安息香酸エステル類を用いる。
問175
製剤に用いられる日本薬局方収載のセルロース類に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 結晶セルロースはα-セルロースを酸で部分的に解重合し、精製したものであり、水によく溶けるので錠剤の崩壊剤として用いられる。×
解:結晶セルロースはα-セルロースを酸で部分的に解重合し、精製したものであり、水には不溶だが、錠剤の崩壊剤として用いられる。
b 酢酸フタル酸セルロースは、無水フタル酸と部分アセチル化セルロースとの反応生成物であり、腸溶性コーティングに用いられる。○c ヒドロキシプロピルセルロースはセルロースのヒドロキシプロピルエーテルであり、フィルムコーティング剤として用いられる。○
d メチルセルロースはセルロースのメチルエステルであり、粘稠化剤として用いられ、また、膨張性下剤としても用いられる。×
解:メチルセルロースはセルロースのメチルエーテルであり、粘稠化剤として用いられ、また、膨張性下剤としても用いられる。
問176 [食塩当量法]
次の処方で体液と等張な塩酸エフェドリン液を調製するのに必要なブドウ糖の正しい量(g)はどれか。ただし、塩酸エフェドリン、クロロブタノール、ブドウ糖の食塩当量はそれぞれ0.30、0.24、0.18である。
食塩当量:医薬品1gが相当する食塩量(g)
等張な食塩濃度:0.9w/v%
処方 塩酸エフェドリン 0.06 g
クロロブタノール 0.15 g
ブドウ糖 [ ]g
精製水 適量
--------------------------------------
全量 30 mL
1 0.10 2 0.20 3 0.30 4 0.40 5 0.50
問177
医薬品の滅菌法に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 適切な滅菌工程で処理された滅菌製品中に存在が推定される汚染菌の最大生存確率を、無菌性保証水準という。○
b 最終滅菌法を適用できない液状の製剤の滅菌には、通例、ガス法を用いる。×
解:最終滅菌法を適用できない液状の製剤の滅菌には、通例、ろ過法を用いる。
解:最終滅菌法を適用可能な製剤の滅菌には、加熱法、照射法、又はガス法の中から適当な滅菌法を用いる。
c 眼軟膏剤は、あらかじめ基剤を滅菌して調製する。○解:最終滅菌法を適用可能な製剤の滅菌には、加熱法、照射法、又はガス法の中から適当な滅菌法を用いる。
d 注射剤に用いるガラス容器は、洗浄後、高圧蒸気法にて滅菌およびエンドトキシン除去を同時に行ってから用いる。×
解:注射剤に用いるガラス容器は、洗浄、滅菌、乾燥、エンドトキシン除去を行う。
高圧蒸気法は滅菌はできるが、エンドトキシン除去ができない。
高圧蒸気法は滅菌はできるが、エンドトキシン除去ができない。
問178
薬物送達システム(DDS)に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 大豆油とレシチンで調製した脂肪乳剤(リピッドマイクロスフェア)は、炎症部位への薬物運搬体として用いられる。○
b ニトログリセリン貼付剤は、生体内分解性の乳酸・グリコール酸共重合体を高分子膜に用いた製剤で、24時間にわたって薬物を一定速度で放出するので、狭心症発作の予防に用いられる。×
解:ニトログリセリン貼付剤は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる放出制御膜(多孔性膜)の製剤で、24時間にわたって薬物を一定速度で放出するので、狭心症発作の予防に用いられる。
c リポソームは、脂質二分子膜からなる閉鎖小胞で、脂質相および水相の両方の相を有しているため、脂溶性および水溶性いずれの薬物も包含することができる。○d マイクロカプセルは、通例、直径数μm~数百μmの大きさで、薬物を芯物質としてこれを高分子膜などで被覆したもので、薬物の安定化や放出制御に利用される。 ○
問179
日本薬局方に収載されている製剤に関連した試験法に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 溶出試験法には、回転バスケット法、パドル法、フロースルーセル法があり、試験に用いる方法は医薬品各条で規定されている。○
b 崩壊試験法において、腸溶性の製剤に対しては第2液のみによる試験を行う。×
解:崩壊試験法において、腸溶性の製剤に対しては第1液、第2液の両液による試験を行う。
c 含量均一性試験法において、個々の含量から判定値を計算し、その値と個々の含量との偏差(%)が限界値以内のときは適合とする。×解:含量均一性試験法は、個々の製剤の主薬成分の含量を、医薬品各条に規定する方法で定量することにより、製剤の含量の均一性を試験する方法である。
質量偏差試験は、製剤の質量の偏差を含量の偏差とみなし、ここの製剤の質量を測定することにより、製剤の主薬含量の均一性を推定し試験する方法である。
質量偏差試験は、製剤の質量の偏差を含量の偏差とみなし、ここの製剤の質量を測定することにより、製剤の主薬含量の均一性を推定し試験する方法である。
問180
日本薬局方に規定された比表面積測定法に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 比表面積の単位は、通例、cm2の単位を用いて示す。×
解:比表面積の単位は、通例、m2/gの単位を用いて示す。
b 測定は、通例、100℃以上において行う。×解:測定は、通例、液体窒素の沸点(-196℃)において行う。
c 吸着気体としては、窒素、クリプトンなどを用いる。○d 測定法として、流動法、容量法の2つの方法が示されている。○